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Image credit: Rick Osentoski-USA TODAY Sports

先日発表されたPECOTAの2020シーズンのプロジェクションの中でも特に興味深いものが一つある。いや、正確に言えば二つの異なったプロジェクションだ。PECOTAのシステムは、大谷翔平が2020年に420打席でDRC+は118、WARPは2.3を記録し、投手としては501人の打者と対戦してDRA-は96、WARP1.2を残すと予測している。投打両方の数字を合計すれば、大谷はクリス・ブライアントザック・グレインキアーロン・ノーラジャンカルロ・スタントンといった名立たる選手よりも高い貢献度をもたらす計算になる。それに加えて、大谷には二刀流のユーティリティーという他の誰にもまねできない付加価値がある。もちろん、大谷がトミー・ジョン手術から復帰するにあたって、エンゼルスはローテーションを6人で回すなど彼を投手としては慎重に起用することが予想されるために実際の貢献度は予想値を多少下回るだろう。それでも、大谷が極めて貴重な選手であることに変わりわない。

マイク・トラウトアンソニー・レンドンジャスティン・アップトンアンドレルトン・シモンズの4人はチームの中心としてはこの上ない。デイヴィッド・フレッチャートミー・ラステラジェイソン・カストロは彼ら4人の周りを固めるには申し分ない存在だ。ローテーションは、いずれも華はないもののフリオ・テヘランディラン・バンディマット・アンドリース(彼はロングリリーバー兼スポットスターターとして92と平均以上のDRA-を残すとの予測が出ている)の加入によって底上げされているし、PECOTAはアンドリュー・ヒーニーグリフィン・カニングの2人に対して楽観的な予測値を出している。また、トレードは破談になってしまったものの、もしロス・ストリップリングジョク・ピーダーソンを獲得できていれば、攻守両面において戦力層に厚みを加えられていただろう。エンゼルスのプレーオフ進出を確実視するにはまだいくらか楽観的になる必要があるが、現時点で彼らは10月(のプレーオフ)に向けた戦いをする準備が整っていると見て間違いない。

こうしたチーム状況を踏まえると、大谷の重要かつやや予想外ともいえる予測値により一層注目が集まる。彼の打撃面でのプロジェクションは彼が過去2年間メジャーリーグにおいて実際に残してきた成績とさほど変わらない。しかし予測システムには、今季が彼が初めて(ほぼ)シーズンを通して二刀流を貫く予定だという事実が組み込まれていないので、そのことを踏まえて予測値をアジャストすることができない。彼の他を超越した才能をもってしても、投手としての出場機会を大幅に増やしながら打撃で同じ成績を残すことは困難に思える。

それでも、投手としての数字には本当に目を引くものがある。予測されているDRA-は大したことないように見えるが、奪三振率はトップクラスだ。今季100イニング以上を投げることが予測されている投手の内、PECOTAが9イニングあたりで大谷より多く三振を奪うと考えているのはゲリット・コールクリス・セールマックス・シャーザーの3人だけだ。PECOTAは、大谷が今季116イニングで173三振を奪うと予測している。これは、彼が2018年に実際に211人の打者と対戦して63奪三振を記録したことを考えると、そこまで的外れな数字ではないが、それでもアグレッシブな予測であることは否めない。また、四球率11.8%、被BABIP.319という予測値は、投手としての大谷が奪三振数に左右され、そこまで多くのイニングを投げることは困難であるということを物語っている。

上記の予測の正確性を見極めるにはまだ少々時間がかかりそうだ。大谷の日本ハム時代の通算成績からは、彼の真の実力が予測されているよりも完成度が高いものであることがうかがえる。しかし、同時に2018年のルーキーシーズンに、マウンド上で投手としての欠点も見受けられた。彼の同シーズンのDRA-は77、今季の予測イニング数の半分以下の稼働量で1.1のWARPを記録したものの、PECOTAのシステムが今季、彼の被BABIPが2018年の.269から大幅に上昇すると見積もっているのは当然のことだ。

数学的な視点で見ればこれらの予測値は理にかなっているが、大谷の成績が単なる統計的なセオリー以上に飛躍する要素もいくつかある。2018年に大谷が献上した全フェア打球のうち、42.3%はスタットキャストの打球角度におけるスウィートスポットに入っていた。全体的に見て、打者は大谷に対して強い打球を打つことは滅多にないものの、ポップフライを打ち上げることなく、最適な角度の打球を放つことはできていたわけだ。ルーキーとして限られたイニング数のなかで、大谷は自慢の豪速球を、打者が空振りやポップフライを打ち上げ安い、ストライクゾーンの高めに投じる術を身に着けることができなかった。この点はかなり改善の余地がある。

同時に、大谷は大きくえぐるように曲がるスライダーで87パーセンタイルの見逃しストライク率を記録した。これは、見逃しストライクを多くとり、与四球を防ぐ効果はあったものの、低めに投じた際に、打者にとっては前述のように理想の角度のフライを打ちやすかったことを意味する。彼のスプリッターは素晴らしい縦の変化を見せる、スライダーよりもさらに圧倒的な、空振りを奪える武器だ。だが落ち幅が甘いスプリッターはアッパーカットスウィングの格好の餌食になりやすく、それは大谷も例外ではない。

もちろん、大谷がよりストライクゾーンの高めを使ったり、スライダーのシェイプを調整するなどのアジャストメントに苦しんだ場合、被本塁打数や被BABIP、与四球率などが劇的に悪化したり、奪三振率が落ちるリスクはある。しかし、大谷のマウンド上での武器は彼の身体能力や、二刀流としての多能性と同じくらい優れている。もし、この我々がかつて見たことがないユニークな選手がその能力を最大限に発揮できれば、トラウトが待ちに待ったポストシーズンでの勝利を手にすることも夢ではない。

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Robert Somerford
3/10
Good read- Thanks Matt
Ginny Searle
3/10
for any readers who don't read Japanese, this is a translation of Matt's piece from PECOTA Week: https://www.baseballprospectus.com/news/article/57004/pecota-2020-shohei-ohtani-two-way/
James Adams
3/14
Chris Bryant?
James Adams
3/14
Nevermind